2017年度 研究成果報告書

Advanced Network Architecture Research Group

6. 次世代フォトニックネットワークアーキテクチャに関する研究
6.1. 光パスネットワークに関する研究
6.1.1. ベイズ推定にもとづく仮想ネットワーク再構成手法に関する研究

エラスティック光ネットワークは、従来のWDMネットワークと比較して、光パスに割り当てる帯域幅(光スペクトル資源)の粒度が小さく、資源の利用効率が高い利点がある。この利点を活かしつつ、今後も増大・変動することが予想されるIPトラヒックをエラスティック光ネットワークに収容するためには、仮想網制御アプローチが必須である。しかし、どのような仮想網を構築すべきかを含めた仮想網制御手法の検討は十分になされてきていない。そこで本研究では、エラスティック光ネットワークにおける仮想網制御手法を提案している。提案手法では、生物が未知の環境変化に適応する振る舞いをモデル化した、アトラクター選択モデルを応用し、現在のトラヒックの収容効率と使用資源数の削減を両立する仮想網を構築する。また、取得した各光パスのリンク利用率をもとに、各光パスの帯域幅の調整を行う。計算機シミュレーションによる評価により、提案手法は、使用資源数を抑えつつ、現在のトラヒックを収容できる仮想網を構築できることを示した。アトラクター選択モデルにもとづく仮想ネットワーク再構成手法は、対地間トラヒックマトリクスの情報を用いることなく良好な性能を得る仮想ネットワークに再構成する。しかし、アトラクター選択モデルにもとづく手法には、ノイズ的振る舞いが含まれるため、仮想ネットワークを過度に再構成し、その結果、仮想ネットワークの利用者が享受する通信品質が不安定となる恐れがある。

この課題を解決するため、ベイズ推定にもとづく仮想ネットワーク再構成フレームワークの研究に取り組んでいる。イズ推定にもとづく仮想ネットワーク再構成フレームワークの基本的なアイディアは、特定のトラヒック状況に対して良好な性能を示す仮想ネットワークを複数記憶しておき、ベイズ推定もとづいて現在のトラヒック状況を同定し、同定したトラヒック状況に適した仮想ネットワークを設定することである。トラヒック状況を表す情報として、対地間トラヒックマトリクスよりも容易に取得可能なエッジルーターにおけるトラヒック流出入量を用いている。また、同定したトラヒック状況に適した仮想ネットワークが現在のトラヒック状況に適さない場合に備え、ノイズを用いた仮想ネットワーク再構成手法を提案フレームワークに組み入れている。計算機シミュレーションを用いた評価の結果、提案手法は対地間トラヒックマトリクスよりも容易に取得可能なエッジルーターにおけるトラヒック流出入量を用いてトラヒック状況を同定可能であり、現在のトラヒック状況に適した仮想ネットワークを構成するまでの再構成の回数を削減可能であることがわかった。


[関連発表論文]
  • Toshihiko Ohba, Shin’ichi Arakawa, and Masayuki Murata, “Bayesian-based virtual network reconfiguration for dynamic optical networks,” to appear in IEEE/OSA Journal of Optical Communications and Networking.
  • 大場斗士彦, 荒川伸一, 村田正幸, "光通信網におけるベイズ型アトラクター選択モデルに基づく仮想ネットワーク再構成手法," 電子情報通信学会フォトニックネットワーク研究会(発表予定), March 2018.
  • Toshihiko Ohba, Attractor-based Virtual Network Reconfiguration under Dynamic Traffic: Towards Cognitive Optical Networking. Ph.D thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, January 2018.
6.1.2. 生物の進化適応性にもとづくVNT制御手法に関する研究

生物システムは、環境変動に対して安定して機能する頑強性と環境が大きく変動した際に自身の状態を大きく変える可塑性を備えていることが知られている。本研究では、頑強性や可塑性を備えた生物システムの進化適応を参考に、適応性や拡張性の高い情報ネットワークの構築手法を検討している。下記論文では、フォトニックインターネットを対象として、トラヒック需要増大に伴う物理設備量の増強を環境変動の1つとして捉え、様々な環境変動に対する進化適応性を備えた物理ネットワークを構築するためのネットワーク設備増強手法を提案している。提案手法では、頑強性と可塑性を備えた生物の進化を説明する数理モデルを導入し、ポート数増強の指針を得る。可塑性を備えた物理トポロジーを構築することで、設定できるVNT の多様性が増し、アトラクター選択にもとづくVNT 制御による将来の環境変動に対する適応性が更に向上すると期待される。提案するポート追加位置決定手法では、ポート追加の候補となる1つのノードに暫定的にポートを追加して得られる物理ネットワーク上で、生物の進化モデルを応用したダイナミクスに従いVNT 制御を行い、システムの適応性を試算する。これをポート追加の候補となるノードそれぞれに対して行うことで、もっとも進化適応性が高まるポート追加位置1 箇所を決定する。その過程を繰り返すADD アルゴリズムによって、ポートを追加する。計算機シミュレーションによる評価では、ヒューリスティックなVNT 設計手法であるI-MLTDA を用いて現在のトラヒック需要に最適な位置にポート追加を行う手法と比較した。12 ノード規模のネットワークを対象に計算機シミュレーションを行った結果、提案手法は比較手法と比べて適応可能な通信量が約8%増加することが明らかとなった。


[関連発表論文]
  • Koki Inoue, Shin'ichi Arakawa, and Masayuki Murata, “A biological approach to physical topology design for plasticity in optical networks,” Optical Switching and Networking, vol. 25, pp. 124-132, July 2017.
  • 井上昴輝, 荒川伸一, 村田正幸, “SDI における仮想網制御の進化適応性を高める計算資源増強手法,” 電子情報通信学会技術研究報告(NS2017-160), vol. 117, pp. 93-98, Jan. 2018.