近年、動画ストリーミングサービスや遠隔Web会議システムの普及が急速に進んでいる。動画像を提供するサービスにおいては、ユーザQoEの向上が重要視されており、QoE向上を目的としたビットレート選択手法の研究が盛んに行われている。ビットレートの選択において、ユーザのQoEを利用するためには、そのユーザ個人に適したQoEの測定が実時間で行えることが必要である。我々は人の生体情報である脳波を用いることで、QoEを推定する手法の実装を行った。脳波を用いたQoE推定のための機械学習モデルの作成のために注意すべき点として、学習に用いるデータセットの準備方法がある。映像視聴中のQoE回答を口頭や筆記で取得する場合、回答のための行動を行う判断、動作自体が脳波に出現し、推定モデルの精度を低下させてしまう。本研究では動画視聴中に品質の大きな低下を発生させ、その際のQoEが低くなるものと想定してラベリングを行い、学習モデルを構築した。学習したQoEの二値分類モデルが、平均7割程度の推定精度であることを明らかにした。MPEG-DASHクライアント上で、推定したQoEを用いてビットレート選択を行う機能の実装を行い、生体情報から推定したQoEに基づきリアルタイムにビットレート選択を行うMPEG-DASHクライアントを実現し、その有効性を検証した。
近年、深層学習に基づく機械学習モデルが広く使われるようになっており、多数のセンサデバイスからの情報を統合して、何等かの判断を機械学習で行うなど、高度な社会の実現が期待されている。一方で、機械学習モデルが、攻撃に対して脆弱であることを示す研究も進められており、攻撃者は機械学習モデルに基づくシステムの性能を低下させる可能性があることが示唆されている。特に、多数のセンサからのデータを統合するような機械学習モデルにおいては、そのうち、一部のセンサに脆弱性が残っているリスクが高くなり、一部のセンサデバイスの侵入を起点として、機械学習モデルが攻撃される可能性があり、実際、我々の研究により、一部のセンサデバイスへの侵入が起点となった攻撃が実際に可能であることについて示している。
本研究では、このような攻撃の対策手法として、一部のセンサデバイスを起点とした攻撃を検知するだけでなく、攻撃の起点となったセンサデバイスを特定する手法について提案した。本手法では、機械学習モデルを構築する際に、入力とするセンサ値を選択できるように学習する。そして、特定のセンサデバイスからの値を入力した場合としなかった場合での機械学習モデルの出力を比較することにより、特定のセンサデバイスの値が他のセンサデバイスの値との一貫性が損なわれる場合を検知、攻撃の可能性のともにその攻撃のもととなったセンサデバイスを検知する。本研究では、シミュレーションにより、本攻撃対策手法により、一部のセンサデバイスが起点となる攻撃の検知と攻撃元センサデバイスの特定が可能であることを示している。